東京高等裁判所 昭和53年(行コ)51号 判決
住民訴訟は、地方自治法の第二編中、普通地方公共団体の財務に関する条章である第九章中の一箇条をもって規定されているところからも明らかなとおり、普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員による違法又は不当な行為による納税者としての住民の損失を防止する目的のもとに、これらの者の財務会計上の違法、不当な行為の予防、矯正を図る権利を直接住民に与え、かつ、訴訟によってこれを確保するため、特に法律の規定によって住民に認められた制度であると解しなければならず、したがって、住民訴訟としての、いわゆる怠る事実の違法確認の訴においても、その対象となりうるものは、当該普通地方公共団体の財務会計の分野に属する事項に限られ、財産の管理又は処分につき怠る事実としてここで問題とされる不作為は、当該財産の財産的価値そのものの維持保全又は実現増殖の目的として行われる財務会計上の作為に関するものに限られるべきであって、右以外の行政上の不作為が、たとえ間接的に当該財産の財産的価値に影響を及ぼすものであったとしても、このような行政上の不作為までも、いわゆる怠る事実として、右訴の対象とすることは許されないものと解するのが相当である。
本件においてこれをみるに、≪証拠≫によると、本件公園は都市公園法第二条第一項によって設置された都市公園であって、被控訴人が館山市の長として館山市都市公園条例(昭和四三年条例第二五号)及び館山市都市公園施行規則(同年規則第一六号)に基づいてこれを管理し、使用を規制している事実を認めることができるが、元来都市公園は、これを利用する住民の保健、休養及び教化に資することを目的とするものであるから、被控訴人が本件公園を管理し又はこれが使用を規制する行為は、普通地方公共団体の長としての被控訴人が当該財産である本件公園の財産的価値の維持保全又は実現増殖を直接の目的とする行政行為には当らないことが明らかである。この点で控訴人は、被控訴人の本件公園の管理又はこれが使用を規制する行為が当を失し、そのために本件公園内が荒廃し、又同公園内に出店を許可された屋台店が火災を起し昭和五二年中には右屋台店の火災から本件公園内の施設である展望台まで延焼させて館山市の財産の財産的価値に影響を及ぼす結果を生じたと主張するが、右主張の荒廃地域及び延焼施設が館山市の公有財産に属し、かつその主張のような結果が生じた事実があったとしても、これは財務会計関係以外の行政上の不作為による間接的影響にすぎないものというべきであるから、右判断を左右することにはならない。
また、右主張のとおり本件公園の荒廃、施設の延焼の事実が存したとしても、これに対処すべき被控訴人の財務会計上の具体的な管理義務を特定して当該怠る事実の主張を控訴人はしていないのであるから、その余の点について判断するまでもなく、結局本訴請求は、その請求の特定を欠くものとして不適法たるを免れない。
(安倍 長久保 加藤)